鳥取県弁護士会

(2) 上記(1)のとおりであるところ,下記ないし点を総合すると,本件 結果がマッサージ不足により生じたものとは考えにくく(なお,原告が,1 1月20日以降,概ね被告に指導されたとおりのマッサージを実施していた ことは,前記のとおりである。),本件結果は左乳房にバッグを挿入する際 に大胸筋下の下方の剥離の範囲が狭かったことによって生じたものと推認す るのが相当である。
マッサージ不足が原因であれば両乳房にほぼ同様の結果が生ずるはずで あると考えられるのに,原告の右乳房のバッグは,左乳房のバッグとは明 らかに異なって,乳輪のやや下方まで入っていた。
このような左右の結果 の違いは,左乳房の下方の剥離が足りないことが原因であることに沿うも のである。
本件手術からわずか5日後の11月17日には既に,原告が,被告に対 し,左乳房について,バッグが少し上に入っている感じで下垂もあるので 変であると訴えていたところ,このことは,マッサージ不足により拘縮が 生じて完成するまでには約1か月ないし約3か月はかかると認められる (被告本人及び弁論の全趣旨)ことに照らして,マッサージ不足が原因で あることには沿わないのに対し,下方の剥離が足りないことが原因である ことに沿うものである。
同月20日には,原告がマッサージを開始した際に,左乳房のバッグの みがバスッという音とともに上方に移動したまま元の位置に戻らなくなっ たところ,このことは,マッサージ不足が原因であるとみては説明がつか ないのに対し,下方の剥離が足りなかったことが原因であるとみれば,下 方にあったバッグが,マッサージの刺激によって容易に上方に移動し,か つ,下方のスペースが狭いために戻らなくなったという可能性が十分考え られるから,説明がつく。
(3) 上記(2)の推認について
ア被告本人は,原告の体質によって拘縮が生じた可能性もあると供述して いる。
確かに,前回手術後にも拘縮が生じたことからすると,原告は拘縮 を生じやすい体質である可能性はあるが,他方,本件手術後も右乳房には 明らかな拘縮は生じていないこと,再手術後には両乳房とも拘縮を生じて いない(再手術から約3か月後の7月21日の写真(甲A4)について, 被告も拘縮の可能性を特に指摘していない。)ことからすると,本件手術 後に左乳房に拘縮を生じたのが体質のみの影響であるとは考えにくい。
イなお,被告本人は,本件手術はCが執刀したところ,その剥離範囲は正 しかった旨の供述をしている。
しかし,仮に被告が言うようにCが執刀医であったとしても,Cは本件 手術の剥離範囲に問題がある旨の意見を述べている(甲B8)し,執刀医 でなく豊胸手術の執刀経験もなかった被告が,腋下切開による豊胸手術に おいて,Cがどこまで剥離したかを正確に視認し,記憶することは容易で はないと考えられ,現に,本件手術においてどの程度剥離がされたかにつ いて具体的な供述をしているわけではないし,手術記録にもその記載をし ていないことからすれば,上記の剥離範囲は正しかったと言う被告本人の 供述は採用することができない。
ウ他に,上記(2)の推認を覆すに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおりであるから,本件結果は,左乳房にバッグを挿入する際の 大胸筋下の下方の剥離範囲が狭かったことが原因で生じたものと認められ る。
4 そこで,左乳房のバッグを挿入する際の大胸筋下の下方の剥離範囲が狭かっ たことにつき,本件執刀医に義務違反があるか否かを検討する。
この点,被告は,下方に剥離しすぎると大量の出血が起こるリスクがあるか ら,本件の剥離範囲が適当であり,義務違反はない旨を主張する。

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